ファミリーホーム事業を行う住宅は、燃えやすい一般住宅の改修工事を行って、耐震・耐火に優れた寄宿舎に用途変更するのが望ましいのですが、ファミリーホーム事業開設希望者の一部に、積水ハウスの住宅なら改修工事をしなくても、そのままで寄宿舎に用途変更できるという噂が流れていると聞きました。実際、積水ハウスで大掛かりな修繕工事を行わずにファミリーホーム事業を行っている里親さんもいるとの話でした。もしそれが真実ならば、開設に必要な住宅費用が安く抑えられますので良いことなのですが、どうも疑わしい話のように思われましたので、ある方を通して積水ハウスの構造に詳しいメーカーの方を紹介していただき、真偽を確かめることにいたしました。
積水ハウスの方にファミリーホーム事業の内容を詳細に説明し、積水ハウスの住宅を改修しないでそのままの状態で寄宿舎に用途変更できるかを確認いたしました。しばらく社内での確認と検討のために待たされた後に、「そのままの状態では寄宿舎への用途変更は不可である。」との返答をいただきました。メーカーの話によりますと、積水ハウスは、一般住宅仕様として国から認可を受けた建築工法であり、寄宿舎に用途変更するためには構造計算からやり直し、寄宿舎用の大掛かりな改修工事を施す必要があるとのことでした。もし、積水ハウスでファミリーホーム事業を行っている方がいるとするならば、その住宅用地が「近隣商業地域」とか「準防火地域」に指定されている地域に建てられたものであり、元々その仕様で建てられていたから改修工事なしで寄宿舎に用途変更できたのであろうとの見解でした。
結論を申し上げますと、積水ハウスだからということで、そのままの住宅で寄宿舎に用途変更をしてファミリーホーム事業を行うことはできないということです。ですから、ファミリーホーム事業開始のための負担を軽減するために、積水ハウスの中古住宅を探している方は要注意です。そのままでは用途変更はできませんから、結局改修工事を行わなければなりませんし、ハウスメーカーの話によりますと、積水ハウスは増改築には不向きな構造だそうで、改修工事は高額になるとの話でした。結局のところ、一般住宅を改修して寄宿舎への用途変更を行うのが現実的だと思います。
ただし、これはファミリーホーム事業を寄宿舎もしくは共同住宅でのみ認めている地方自治体においての話であり、一般住宅でもファミリーホーム事業を行えるとする地方自治体においてはこの限りではありません。しかし、何度も話しているように、大切な児童のいのちをお預かりする養育事業において、児童のいのちを危険にさらす燃えやすく壊れやすい住宅で養育することは望ましくありませんし、万が一、児童の尊いいのちが失われるような重大事故が起こった場合、ファミリーホーム事業者も開設を承認した児童相談所も大きな責任を問われることになるでしょう。児童の最善の利益を求めるのが児童福祉のあるべき姿ですから、初期投資が少なくすむという大人の側の都合で、児童の安心・安全が守られない住宅で養育事業は行うべきではないと私は考えます。